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悪の華

2006.11.08

天地(アメツチ)は宮居なり、宮柱生きたりな。
時ありて、おぼろげに言告ぐらしも。
象徴の森わけて、人間のここをよぎるに
森の目の、親しげに、見まもりたるよ。
夜のごと、光のごとく、底いなき、
暗くも深き瞑合の奥所となる、
声長き遠つ木魂(コダマ)の、とけ合うとさながらに、
匂いと、色と、ものの音(ネ)と、相呼び合うよ。
匂いあり、爽やかさ幼児(ウナイ)の肌(ハダエ)さながらの、
やわらかさ木笛(キブエ)に似たる、さみどりの牧原めける、
__またありぬ、こは敗頽(ハイタイ)の、豊かなる奢れる匂い、
譬うなれば、竜涎(リュウゼン)、麝香(ジャコウ)、薫香や安息香や
果しなきものの姿にひろがりて
感覚の、知覚の、無我の法悦を、謳歌したりな。

_________Correspondances【呼応】シャルル・ボードレール著/堀口大學訳/新潮文庫より抜粋