ジャン・ジャンセン(Jean Jansem,1920年 - )はフランスで活躍するアルメニア人画家です。
卓越したデッサン力により様々なコンクールで受賞を重ね、現在に至っています。
日本では1993年4月24日、安曇野に世界で初めての彼の美術館「安曇野ジャンセン美術館」が開館しました。
その他、アルメニア大虐殺のシリーズを描いた後に画家としての功績が認められ、
フランスのレジオン・ドヌール勲章と故国アルメニアの国家勲章を受賞しています。
私は一枚の絵から感興を覚えない。
もし、私が一つの物を見なければ私はそのものを感じない。
例えば、私がもし戦争に行かなかったら
私は戦争のデッサンを描く事ができなかっただろう。
私にとって重要なのは想像ではなく見たものである。
1960年~1990年頃までジャンセンが使用していたイーゼルは、国外に行く時にも何度も持ち出していたほど愛着のあるものでした。このイーゼルは、画家がアトリエで描いているというイメージで、作品展示にも使用しています。
500号(3333×2485mm)までの作品を描いているため、作品に合わせてさまざまな筆を用いているのがみてとれます。 中でも線(デッサン)画家であるジャンセンは、面相筆をかなり高い頻度で使用し、その品質にも非常にこだわっています。
ジャンセンは仕事の際、絵の具のふたは開けっぱなしのままで集中して描きます。しかし、仕事が一段落すると全てきちんと元通りの場所にしまい、大切に片付けます。
ジャンセンが実際に使用していたパレットです。
館内にはカンヴァス(キャンバス)をそのままパレットにしたものも時折展示しています。
ジャンセンの作品には、こうしたキャンバスを使ったパレットを元にした遊び心のある作品もあります。
ジャンセンは油彩、水彩、デッサン、石版画、銅版画、ブロンズといった様々な技法を用いた作品を中心に発表しています。
ジャンセンが使用する絵の具の分量は、一般的な作品に対して使用される量よりもかなり少ないため、出入りの画材屋に「絵の具はどちらで買っているんですか?」と聞かれることもあったのだとか。
画材はブランドにはこだわらず、品質第一で選びます。
ジャン・ジャンセンの作品鑑賞ポイントを安曇野ジャンセン美術館学芸員がちょっとだけご案内いたします。
作品にこめられたテーマや時代背景、技法などを知ることで、より深くジャンセンの世界観に浸ることができるのではないでしょうか。ジャンセン作品及び、ジャン・ジャンセンへの理解を深めていただければと思っています。
ジャンセンの暖かな眼差しと人柄を一番に感じられるのがこれらの人物画です。彼の作品を総じて『暗い』『重い』と感じられる方もおられますが、彼の視線はいつもまっすぐで、それらこそが彼自身が実際に目にして感じた『美しいもの』なのです。
『ジャンセンといえば“バレリーナ”』と言われるほどに彼の踊り子は有名です。 それは彼の描く線が、彼女達の気丈な中に見え隠れする危うさや線の細さと重なって表現されているからではないでしょうか。彼女達の息づかいの中に、彼の世界もまた息づいているようです。
ベニスシリーズの作品の前に立つと水場のひんやりとした空気とその透明感に包まれ、私たちを清めてくれているように感じられます。
悲喜劇の大家ゴヤに出会ったことで、彼の眼はますます心の深層へと向けられます。マスクのシリーズでは、『人々は仮面をつけると真実を隠したと思い込んでしまう、しかしそれが却ってその真実を明るみに出してしまっているのではないか?』ということを表現したシリーズです。
勇ましい闘牛の場面でさえ、ジャンセンの眼には拍手喝采を浴びる闘牛士ではなく、無惨に殺された牛が映っていました。会場は何と騒がしいことでしょう、その反面同じ空間に、こんなにも静寂な世界が同時に存在していました。彼は常に光だけではなくその光が生み出す翳の部分にも、愛と哀しみを持って視線を向けています。
美術鑑賞はもちろん、ジャンセン美術館には、くつろぎの場所がたくさんあります。
作品鑑賞の後は木立を眺め小鳥のさえずりを聴き、ゆったりとしたやさしい時間を過ごしてみませんか?カフェだけのご利用ももちろん可能です。
休日は本を片手におひとりで。大切な方とのお待ち合わせに。テラス席なら大切なペットと一緒にティータイムも。当店菓子職人による手作りのケーキと心のこもったサービスをご用意してお待ちしております。