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挿画集(挿画本)のこと

2011.03.05

ただいま開催中の挿画集の企画展で、本日お問い合わせをいただきましたので少しこちらにも書いておきたいと思います。
挿画集(挿画本とも呼びます)は19世紀から20世紀にかけ、印刷技術の発展や庶民に書物が流通していったことでヨーロッパ諸国で当時多数制作されており、沢山の芸術家が取り組みました。しかしこれらは現在の書籍のような大型機械による大量印刷ではなく、それぞれ作家独自の芸術的価値を加え且つ限定部数で発行されたために、本の内容と合わせ美術作品としても扱われています。
当館はジャンセンの作品世界をご紹介する美術館のためジャンセン氏の描いた絵画を切り口にこうした文学の扉を開いていますが、こうした挿画集そのものの企画展は日本のみならず世界各地で様々な作家の名の下に開催されているものです。この場合の作家とは挿画を描いた側である場合はもちろん、文学を書いた側の場合も当然あると思います。また、本を版画(石/銅/木/他)で刷っていることから版画を切り口とした展覧会もあるようです。



挿画本を制作した主な作家としては、ピカソ/ブラック/マティス/シャガール/ダリ/ミロ/ユトリロ/ルオー/ジャコメッティ/バルテュス/カンディンスキー/ローランサン/コクトー/コルビュジェ/フジタ…と、本当に沢山います。例えば私も2007年に偶然高崎市美術館さんでピカソやブラックなどの挿画集をみせていただけて面白かった記憶があります。そう、もしかしたら皆さまのお宅近くの館でも何冊かお持ちかも知れませんのでよろしければそのうちぜひ聞いてみてください。『収蔵はしているものの展示はしたことない』という館も意外に多いのでは…と思います。
挿画集はやはり特殊な本のためほとんどの場合で所謂コレクターだけが所持していて、たまに出てきてもバラバラに売られてしまっているのがほとんどです。しかし挿画集というのは文字や挿画の芸術性だけでなく本そのものの装丁や紙の種類や使用した書体などにも様々な気配りがなされていて、こういった部分にもご注目いただくとより一層お楽しみいただけるものとなっています。